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No.1プレゼンター ~発表できるんです~

No.1プレゼンター ~発表できるんです~ 【発表編】 第3回

第3回 オンライン発表の基本とコツ

発表編では、実際にプレゼンテーションする際のノウハウを、経験豊富な先生方から発表のタイプ別にご紹介いただきます。第3回となる今回は、2020年以降拡大しているWEB会議システムを導入した学会でのオンライン発表の基本とコツについて、九州医療センターの中尾 新太郎先生に教えていただきます。

著者中尾 新太郎先生九州医療センター 眼科 医長
<著者プロフィール>
中尾 新太郎先生

九州医療センター 眼科 医長

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※2021年6月現在
2020年春の新型コロナウイルス感染症の流行を受け、感染防止の観点から多くの学会がWEB会議システムを導入したオンライン開催を取り入れるようになり、学会の開催スタイルが大きく変わりました。この傾向は今後も続き、皆様にもオンライン発表の機会が増えてくることと思います。事前準備やスライド作成の基本は、通常の口演発表と共通する部分が多いので、ここでは私の経験を通じてオンライン発表特有の留意点とコツを紹介します。

I. オンライン開催と従来型の学会におけるプレゼンテーションの違い

オンライン開催の学会では、ライブ配信とオンデマンド配信の2通りの方法が採られるのが一般的です。図1に従来の学会と2通りのオンライン学会について、学会開催までの流れの主な違いを示します。

 

ライブ配信の場合は、従来の学会と同様に発表時間が割り当てられ、学会から提供された参加者用のURLからログインして座長の指示に従ってリアルタイムで発表を行います。オンデマンド配信の場合は、事前にプレゼンテーション動画を作成して学会指定の期日までに学会WEBサイトにアップロードします。アップロードされた動画は、アクセス許可を有する視聴者であれば、学会が定める一定期間、自由に閲覧できます。

 

オンライン開催には、本来的な目的である感染防止の他に、視聴人数が会場の大きさに縛られない、会場まで移動しなくてよい、という利点が挙げられます。将来的には従来型の開催スタイルの利点も勘案したオンライン開催とのハイブリッド型が増えていくと予想しています。

II. オンライン発表の準備

1.事前準備のポイント

オンライン開催において発表者が感じる大きな変化の1つは、聴衆の顔が見えないという点です。聴衆の反応がわからない状況で、いかに自分の述べたいことを伝えるかが新たな課題となっています。したがって、従来の学会発表以上に、想定される聴衆の情報をしっかり収集しておく必要があります。例えば共催セミナーの場合は、どのような先生方を対象に参加を募ったのか、共催企業に問い合わせれば把握できると思います。学会発表は聴衆の気持ちや行動の変容を促すための手段である、と私は考えています。そのことを念頭に置き、どのような方を対象にした学会・テーマであるか、情報ニーズは何か、を考慮しながら自分の伝えたい内容を絞り込みましょう。

 

スライド画面共有時に演者の姿が画面に映らないことが多いオンライン発表では、視聴者からも、発表者の様子を見ることができません。そのため、自分の考えや伝えたいポイントを整理し、わかりやすい発表原稿を練り上げる意義は、従来以上に増すと思います。発表原稿を入念に作成し、ライブ配信の場合は特に発表練習を繰り返し行いましょう。

 

学会の指定するWEB会議システムにはさまざまなものがありますので、発表当日にスムーズに操作できるよう、慣れておく必要があります。それぞれのWEB会議システムの使い方やPC操作を確認するためにも、ご自身で事前にリハーサルを行っておくとよいでしょう。

2.発表に適した場所の確保

オンライン発表におけるもう1つの大きな変化は、発表する場所を自ら探し、確保しなければならないという点です。勤務先の施設内や自宅などで、通信環境がよく、周囲の雑音を遮断できる場所を確保することが極めて重要です。これが想像以上に困難ですので、前もって発表場所の確保に努めましょう。私も過去、科長室でプレゼンテーション動画を収録した後に見直したところ、収録時には気づかなかったドアの開閉音が入ってしまっていたことがありました。その他、背景画像を使用できない場合を考えて、画面に映り込む背景ができるだけ整った状態であることも大切です。

III. オンライン発表におけるスライド作成上の基本的な留意点とコツ

1.発表に関する規定を遵守

学会のホームページ上に発表に関する規定が掲載されていますので、必ずチェックしましょう。WEB会議システムのダウンロード方法と使い方、ログインのタイミング、アップロードする画像や動画ファイルの種類、プレゼンテーション動画作成マニュアルなどが用意されていますので、熟読し遵守します。

2.スライド作成の留意点とコツ

ライブ配信でもオンライン配信でも、持ち時間内に発表を終了することは最低限のマナーであり必須事項です。スライド枚数は時間(分数)×2枚以内を目安にしましょう。私は、「読ませる」よりも「見せる」ことを意識したスライドづくりを心がけています。文章ではなくkey wordsを示す、図表を活用する、といったことです。文字はできるだけ大きく、タイトルは60ポイント、本文は48ポイントを原則とし、文字色を変えてメリハリをつけることを意識するとよいと思います。アニメーションの使用も効果的ですが、凝りすぎに注意しましょう。 オンライン発表では聴衆から発表者の姿が見えず、身振り手振りによる補足ができないことが多いので、重要な点、最も伝えたい点は特に、文字の色や大きさを変えて強調する工夫をすることが求められます。


オンデマンド配信の場合は、視聴者が一時停止をかけてスライドを子細に見ることができるため、従来の学会発表スライドよりも多くの情報を掲載することが可能です。共催セミナーでは統計解析の手法、引用文献の書誌事項などの記載は必須ですが、その他のオンライン発表でもそれらの情報量を増やしてもよいと思います。その際、記載する情報に誤りがないように十分注意してください。

IV. プレゼンテーション動画収録とオンライン発表本番における基本的な留意点とコツ

1.オンデマンド配信の場合

オンデマンド配信の場合、事前にプレゼンテーション動画を収録します。スライドのみが映し出され、発表者の姿は画面に映らないのが一般的です。円滑で正確なプレゼンテーションにするために、準備した発表原稿を読み上げても構いません。収録したら、必ず動画の確認を行いましょう。発表全体の流れや内容はわかりやすいか、聞き取りやすく話せているか、時間内に収まっているか、雑音が入っていないか、をチェックします。余裕があれば、同僚にも動画を見せて意見をもらい、アップロード期限までの時間を使って納得できるまでブラッシュアップしましょう。私も時間のあるときは家族にプレゼンテーション動画を見てもらい、よりよい発表になるよう練習を重ねています。

2.ライブ配信の場合

ライブ配信の場合は、時間に余裕を持って発表場所へ移動し、通信環境やPC操作の確認を含めたリハーサルを行うことをおすすめします。オンライン発表にはトラブルがつきものです。私も以前、オンライン講演会の際に画面共有の操作ができずに困ったことがありました。直前のリハーサルはもちろん、トラブル発生時にサポートしてもらえるよう同僚に同席してもらうなど、できる範囲でトラブル回避の対策をとっておくとよいでしょう。


ライブ配信では、発表者が画面に映し出されることが多いので、視聴者に失礼にならない服装で臨みましょう。可能であれば事前にどのような映り方になるかを確認して対応しましょう。


発表時のポインターは動かし過ぎないこと、自分の姿が画面に映る間はカメラ目線を意識しましょう。背景画像を使用する場合には、発表者の姿が映える単色あるいは所属施設のロゴを配したものなどを選ぶとよいと思います。

3.質疑応答

ライブ配信による質疑応答は、チャット機能などを使って画面上に質問が描出されます。従来の学会では、誰が質問しているかがわかるので質問の意図を把握しやすかったのですが、オンラインの場合は質問者の顔が見えず質問の意図を想定しにくくなります。この点が、従来学会とオンライン学会の大きな違いです。


オンデマンド配信の場合は、後日、質問が学会経由で送られてくることもあります。ライブ配信に比べれば回答時間に余裕がありますので、質問内容を吟味し、文献調査も加えた回答を、仮に答えが見つからなかった場合はその旨を、一週間以内を目安に返すようにしましょう。


質疑応答の意義は、発表をきっかけに新たな課題を見出すことにあります。発表スライド画面に自身のEメールアドレスを示し、「質問、ご連絡をお待ちします」等と記載して質問を受け付ける工夫をしてもよいでしょう。それにより、他の参加者と面と向かって挨拶したり名刺交換をしたりする機会がなくなる点もカバーできるのではないかと思います。

No.1 プレゼンターを目指す先生へ
「オンライン発表は多くの視聴者にメッセージを届ける絶好のチャンス」

15年ほど前に基礎研究に従事していた頃、私は学会での発表には新たな発見が必須と考えていました。その後、臨床の場に異動したとき、最先端の知見や技術よりも日常臨床で活用できる情報のニーズが高い場合もある、ということに気づきました。聴衆の情報を事前に入手し、そのニーズに沿って発表内容を整えることが重要であることを改めて強調しておきます。そして、自分の主張点を自身が十分に理解していることを、プレゼンテーションを行う上での必須条件に挙げたいと思います。


学会発表は医学/医療の変革に繋がる可能性を秘めており、聴衆は発表者が考えるよりはるかに多くの期待を持って参加しています。特に、オンライン開催というスタイルに学会がシフトし、視聴者の人数が会場規模に左右されなくなったことで、自身の研究を伝えるチャンス、活かされるチャンスが圧倒的に広がったと言えます。学会の開催スタイルの変更を前向きに捉えた若きプレゼンターによる、積極的な学会発表を期待しています。

著者中尾 新太郎先生九州医療センター 眼科 医長

<著者プロフィール>
中尾 新太郎先生

九州医療センター 眼科 医長

1998年鹿児島大学医学部卒業。2000年九州大学医学部大学院医学研究科(医科学分野)、2006年Massachusetts Eye & Ear Infirmary留学、2013年九州大学病院 助教を経て、2017年九州大学病院 講師に就任。2020年九州医療センター 眼科 医長に就任、現在に至る。

※2021年6月現在

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