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No.1プレゼンター ~発表できるんです~
No.1プレゼンター ~発表できるんです~ 【準備編】 第3回
第3回 伝えるための「見やすい」資料を作るちょっとした工夫
伝えるために気を付けるべきは、「見やすさ」です。
資料を見やすくするために、今すぐできるちょっとした工夫やコツにはどんなものがあるのでしょうか。
色の選択から余白の取り方、フォントの選び方について、資料作成コンサルタントの山橋美穂さんが解説します。
皆様こんにちは。資料作成コンサルタントの山橋美穂です。今回は資料のビジュアルについてご紹介します。
資料は「伝える」ために作成します。これは業種や職種や目的に関係なく共通している資料の役目です。では、伝えるために最初に気を付けるべきことは何でしょう。それは「見やすさ」です。見やすくなければ、伝わるものも伝わりません。あまりにも見づらければ読んでもらえない可能性もあります。「見やすさ」は資料のファーストステップです。
では、資料を見やすくするちょっとした工夫を紹介します。
内容に合わせて色を決める
色にはとても重要な役割があります。例えばタイプ分けやビフォーアフターなど、色で表現することでわかりやすくなる情報がたくさんあります。意味に合わせて色を使い分けると、理解も促されるためわかりやすい資料になります。
理由なく色を使っている。
ビフォーをグレーにすることで過去を表し、アフターを目立たせて重要な情報であることをアピール。
十分な余白を作る
情報を詰め込み過ぎると圧迫感が出て、「読みづらい」という印象を与えます。スライド、行間、図形など、全てにおいて十分な余白を取ると、窮屈感がなくなりスライドが見やすくなります。
「余白=見やすさ」を意識して1枚のスライドに載せるコンテンツの量に注意し、読み手の視線にゆとりを与えましょう。
情報を詰め込み過ぎて余白がなく窮屈。
情報を整理してスライド上に十分な余白を持たせることで視線にゆとりができる。
視線の動きに沿ってコンテンツを配置する
一般的に視線には動きのクセがあります。その視線の自然な流れに沿ってコンテンツを配置することで、情報がすんなりと入ってきます。一方、視線の動きに無理が生じると、脳が情報を処理するのに時間がかかり、スムーズな理解の妨げになります。
視線の動き
視線の動きを無視した配置。不自然な流れで、意識的に目で番号を追いかけなければならず、一瞬混乱する。
視線の自然な流れに合わせたレイアウトなので、違和感がなく内容が頭に入ってくる。
ちょっとしたコツで資料はぐっと読みやすくなります。これらのポイントを反映して、伝わる資料を作成しましょう。
読みやすいフォントとそのサイズ
資料を読むという観点から考えると、フォント選びにもコダワリが必要です。実は、資料作成の研修を行っていて、非常に多い質問の1つが「どのフォントを使えばいいのか」です。フォントの種類は使用するソフトによりますが、PowerPointの場合はとても多くの日本語フォントが用意されています。どのフォントを使うかによって、読みやすさも与えるイメージも変わってきます。
- 丸ゴシック
- 文字が丸みを帯びていて、優しくて可愛らしい印象を与えるフォント。そのため、ビジネスシーンには不向きですが、子ども向けの商品資料などに使用すれば効果的です。
- 明朝
- 気品や高級感があり、聡明な印象を与えるので、契約書などに使われる他、ビジネスシーンに向いています。
それぞれ与える印象が違うため、打ち出したいイメージに合ったフォントを選ぶか、資料の目的やニーズに沿ったフォントを選びましょう。
文字には、可読性と視認性があります。可読性とは読むためのフォント、つまり文章が読みやすいかどうかです。視認性とは見るためのフォント、つまりパッと見た時の認識のしやすさを指します。
- ゴシック体
- 横線と縦線の太さが殆ど変わらず、クセが少ないため文字に表情がなく、遠くからでも見やすいことから、視認性の高いフォントです。ただし文字の線が太いので長文を読ませるには不向きです。
最近使われている「游ゴシック」はゴシック体の中でも線が細いので、長文でゴシック体を使用したい時はこのフォントを使用すると良いでしょう。 - 明朝体
- 横線が縦線より細く、はらいやうろこ(文字の角にある三角形の山)があるので日本語として読みやすく可読性が高いフォントです。読んでいて目が疲れにくいので、新聞や書籍などの長文に向いています。
基本的に、1つの資料の中で使用するフォントの種類は統一することをお勧めします。違うフォントを使用すると目につきやすいので、複数のフォントを混在させると全体的に落ち着きのない資料になります。また、フォントが違うことに何か意味があるのではと思わせてしまいます。特別な理由がない限り、使用するフォントの種類は半角英数字と全角の2種類にしましょう。
フォントサイズについても多く受ける質問の1つです。フォントサイズは、スクリーンやディスプレイを使って発表する資料と、プリントアウトして配布する資料で変える必要があります。配布資料なら18ptでも十分に読むことができます。しかし、スクリーンに投影するならば、18ptでは小さすぎて読めません。フォントサイズは、投影用なら20から40ptの間で、配布用なら10から24ptの間のサイズを使用すれば、十分に読める大きさです。
フォントの設定は、「ホーム」タブの「フォント」カテゴリーから行えます。
また、資料を作り終えた後に、資料内で使用しているフォントを変更したい場合は、「ホーム」タブの「編集」カテゴリーにある「置換」の中の「フォントの置換」で変更することができます。
資料作成途中や完成した後にフォントの種類を変更したい時は、この操作方法で簡単に変更できます。
ちなみに、私が良く使うフォントは「MS P ゴシック」です。ゴシック体は可読性が低いですが、PowerPointを使用したプレゼンテーション資料では長文を読ませる必要がなく、むしろパッと見て瞬時に何が書かれているか認識して貰う必要があるのと、「MS P ゴシック」は文字に強いインパクトがなく、特定の印象を与える心配がないので、このフォントを好んで使用します。ご参考までに。
<著者プロフィール>
山橋美穂
ビジネスアシストパートナ株式会社 代表取締役
プレゼンテーション資料作成アドバイサー・コンサルタント
1999年青山学院女子短期大学卒業、2006年武蔵野美術大学卒業。
武蔵野美術大学在学中より、外資系である日興シティグループ証券株式会社のプレゼンテーション資料作成チームに就業。実務にて法人企業向け資料の作成スキルを身につける。その後、経験を活かして独自に専門的な資料作成の知識を学びながら、ベンチャー企業やIR企業にて提案書や決算報告書作成の経験を積む。
2012年に資料作成の専門家としてフリーランスに転向。資料作成代行、アドバイザー、レクチャー講師等を行いながら、ヴィジュアルを重視した絵で見るプレゼンテーション資料の構築を目指している。
2017年5月、ビジネスアシストパートナ株式会社を設立。
<著書>
電子書籍『スティーブ・ジョブズのプレゼン資料はなぜスゴイのか』(ゴマブックス、2014)
電子書籍『資料作りが苦手でも時短テクニックが身につくPowerPoint最速仕事術』(ごきげんビジネス出版、2019)
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