眼瞼挙筋の機能が良好に保たれている後天性眼瞼下垂では、菲薄化・伸展しているミューラー筋や挙筋腱膜が手術の際の標的組織となるが、非常に薄いこれらの筋・腱層は個人差もあることから、その検出は決して容易ではなく、定量的な顕微鏡下手術へ発展するには難があった。
　ここでは筆者の開発した生体染色法、クロコダイルクランプ、新デルマ鉤などによりミューラー筋や挙筋腱膜をシート状の膜として剥離・分離する手術手技を紹介する。これにより安定したミューラー筋や挙筋腱膜の分離が可能となり、従来の様な画一的な挙筋短縮ではなく症例に対応したオーダーメイド医療への発展が期待できるものと思われる。
　また眼瞼下垂の診断法や評価法を解説し、その結果に応じた経結膜的ミューラー筋短縮術、経皮的ミューラー筋短縮術、挙筋腱膜短縮術などの各種手術適応基準に関して私案を解説する。