領域 アレルギー性結膜炎

高濃度エピナスチン塩酸塩の抗ヒスタミン作用(in vitro

受容体結合親和性(in vitro

ヒスタミンH1受容体を発現させたCHO細胞において、エピナスチンおよび各種抗ヒスタミン薬は、ヒスタミンH1受容体に対し以下の親和性を示しました。
アレジオン®LX点眼液0.1%の有効成分であるエピナスチンのKi値は4.5nMでした。

ヒスタミンH1受容体への結合親和性(in vitro
ヒスタミンH1受容体への結合親和性(in vitro)のグラフ
方法
第二世代非鎮静性抗ヒスタミン薬のヒトH1受容体に対する結合親和性について、ヒトH1受容体を発現させたCHO細胞(チャイニーズハムスター卵巣細胞)を用いて、H1受容体への3H-ピリラミンの結合に対する競合能から各薬剤の結合親和性(Ki値)を算出した。

Matsumoto Y. et al.:Pharmacology, 81, 266(2008)より作図

結膜分布試験(ラット)

アレジオン®LX点眼液0.1%の、Cmaxは1,717ng/g、AUC0-8hは2,686ng・h/gでした。
アレジオン®点眼液0.05%の、Cmaxは704ng/g、AUC0-8hは1,257ng・h/gでした。

アレジオン®LX点眼液0.1%およびアレジオン®点眼液0.05%を単回点眼したときの結膜中エピナスチン濃度推移(ラット)
アレジオン®LX点眼液0.1%およびアレジオン®点眼液0.05%を単回点眼したときの結膜中エピナスチン濃度推移(ラット)のグラフ

アレジオン®点眼液0.05%の点眼後8時間の値は定量下限値(8.7ng/g)未満のため示していません。

方法
ラットの両眼にアレジオン®点眼液0.05%、アレジオン®LX点眼液0.1%をそれぞれ5µL単回点眼し、LC-MS/MSにより結膜中のエピナスチン濃度を測定した。
結果
結膜中エピナスチン濃度は、いずれの点眼液においても最初の測定時点である点眼後1時間にCmaxに到達した。

社内資料:ラットを用いた0.05、0.1、0.3および0.5%DE-114点眼液点眼時の結膜中エピナスチン濃度推移

抗ヒスタミン点眼剤点眼後の抗ヒスタミン作用(薬物動態学1)および薬力学2)に基づくイメージ図)

結膜中の薬剤濃度が高いほど、また同じ濃度であれば抗ヒスタミン活性が高いほど、強い抗ヒスタミン作用が期待されます。

イメージ図

Doctor’s Comment

アレルギー性結膜炎の治療に用いられるヒスタミンH1受容体拮抗薬は、ヒスタミンがH1受容体に結合するのを阻害することでヒスタミンの作用を抑制しますが、より強力な抑制作用を得るためには、結膜中の薬剤濃度の高さ、同じ濃度であれば抗ヒスタミン活性の強さが重要となります(※上記イメージ図)1、2)

1) Bartlett JD. et al.: Clinical Ocular Pharmacology, Butterworth-Heinemann, p.19(2001)
2) 髙折修二 他, 監訳: グッドマン・ギルマン薬理書(第12版), 廣川書店, p.59(2013)

ヒスタミンH1受容体拮抗作用(in vitro

試験方法

HeLa細胞にQuest Fluo-8TMAM(以下、Fluo-8)10µMを添加後、20分間培養し、共焦点レーザー顕微鏡下で細胞内Ca2+の蛍光を撮影した。撮影開始後、1mMのヒスタミンを添加した。ヒスタミン添加から21秒後に1µMまたは2µMエピナスチン塩酸塩、1µMまたは2µMオロパタジン塩酸塩またはHanks’BSS(コントロール)を添加し、43秒後まで観察した。6回実験を行い、蛍光強度を0から255までの256段階で定量化し、撮影画像の平均蛍光強度を算出した。抗ヒスタミン薬添加時の蛍光強度を1とした相対値を用いて解析した。

試験方法の図表

ヒスタミン刺激後の細胞内Ca2+濃度を指標にエピナスチン塩酸塩のヒスタミンH1受容体拮抗作用をリアルタイムで撮影した実験映像「高濃度エピナスチン塩酸塩のヒスタミンH1受容体拮抗作用(in vitro)」は、こちらでご覧いただけます。

貞方久人, 福島敦樹:アレルギーの臨床 39: 1151,(2019)
利益相反:本研究は参天製薬株式会社からの資金の支援を得て行われた。

エピナスチン塩酸塩を添加した細胞では、蛍光強度に変化が見られました。

蛍光強度(細胞内Ca2+濃度)の変化

蛍光強度(細胞内Ca2+濃度)の変化の図表

エピナスチン塩酸塩はヒスタミン1mMに曝露された細胞に対して薬剤添加8秒後から、1µMよりも2µMの方が、蛍光強度を有意に低下させました(p=0.01、Bonferroni法による多重検定)。

蛍光強度の推移(1mMヒスタミン、1µM及び2µM抗ヒスタミン薬添加後)

蛍光強度の推移(1mMヒスタミン、1µM及び2µM抗ヒスタミン薬添加後)のグラフ

貞方久人, 福島敦樹:アレルギーの臨床 39: 1151,(2019)
利益相反:本研究は参天製薬株式会社からの資金の支援を得て行われた。

福島 敦樹 先生

Doctor’s Comment

監修:社会医療法人三栄会 ツカザキ病院 眼科 部長 福島 敦樹 先生

アレルギー性結膜炎の症状には、眼そう痒感、充血、流涙、眼脂などが挙げられますが、患者さんにとって最もつらい症状は眼そう痒感であり、眼そう痒感を抑制することは治療の大きな目標です1)

季節性あるいは通年性のアレルギー性結膜炎では、花粉などの抗原により肥満細胞内に蓄積されているヒスタミンなどのケミカルメディエーターが放出され、眼そう痒感が引き起こされます。ケミカルメディエーターの中でもヒスタミンは、眼そう痒感を引き起こす最も重要なメディエーターであると考えられます。

ヒスタミンによってかゆみが生じる際、ヒスタミンが結合したH1受容体からのシグナル伝達によって、細胞内Ca2+濃度が上昇します2)。そこで、我々は細胞内Ca2+濃度を指標に、抗ヒスタミン薬のヒスタミン拮抗作用をリアルタイムで撮影し、1µMのエピナスチン塩酸塩が1mMヒスタミンによる細胞内Ca2+濃度の上昇を有意に抑制することをすでに報告しました3)。この研究では、0.05%エピナスチン塩酸塩点眼液の点眼30分後の結膜中濃度を非臨床試験の結果から1µMと想定し、1µMでのエピナスチン塩酸塩の作用を検討しました。本研究では0.1%エピナスチン塩酸塩点眼液の抗ヒスタミン作用を検証する目的で、2倍濃度の2µMエピナスチン塩酸塩の作用について検討しました。その結果、1µMと比較して2µMのエピナスチン塩酸塩の方が1mMヒスタミンにより上昇した蛍光強度を薬剤添加8秒後から有意に低下させることが確認されました4)

1) 福島敦樹:医学のあゆみ, 262, 863(2017)
2) Simons FE. et al: J Allergy Clin Immunol 128: 1139,(2011)
3) 貞方久人, 福島敦樹:アレルギー・免疫 24:1656,(2017)
4) 貞方久人, 福島敦樹:アレルギーの臨床 39: 1151,(2019)

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