領域 緑内障
緑内障患者通院継続支援システム※導入による緑内障患者の通院継続率に及ぼす影響
Effects of implementation of glaucoma patients visit persistence support system on visit persistent rate of glaucoma patients.
田中敏博 他:緑内障患者通院継続支援システム導入による緑内障患者の通院継続率に及ぼす影響. 眼科. 2020; 62(8): 801-807.
監修:東京大学医学部 眼科学教室 教授 相原 一 先生
※参天製薬株式会社にて開発されたACT Pack®を使用した。
緑内障治療を開始した患者において、本支援システム(以下、ACT Pack®)導入有り群では導入無し群と比較して、180日間の通院継続率(累積生存率)が有意に高値を維持しました(p<0.0001、Log rank検定)。また、ACT Pack®導入有り群におけるACT Pack®導入後180日経過以降の最初の来院時の眼圧値は、初診時と比較して有意に下降していました(p<0.0001、対応のあるt検定)。
- 目的
- ACT Pack®導入による緑内障患者の通院継続率への効果の評価
- 対象
- 2016年4月~5月の間(ACT Pack®導入無し)、もしくは2017年4月~5月の間(ACT Pack®導入有り)に国内で試験対象であった8施設の中で、累積生存率が70%以下の6施設を限定し、その中で新規に緑内障と診断された131例の患者
- 方法
- 試験の対象とした8施設のうち、累積生存率が70%以下の6施設の対象患者の通院状況を観察期間を最小180日として、来院日と予約日を診療録または予約システムから収集し、ACT Pack®導入の有無による累積生存率を多施設共同後ろ向き研究で比較した。また、ACT Pack®導入有り群の眼圧データについて初診時と180日経過以降の最初の来院時に眼圧値を測定し比較した。
- 評価項目
- 通院脱落を死亡と定義した累積生存率(通院継続率)
- 解析計画
- 来院予定日から30日後までに来院していない場合を通院脱落と定義し、Kaplan-Mayer法で通院脱落を死亡として累積生存率を算出した。ACT Pack®導入の有無による累積生存率の差はLog rank検定を用いて比較した。ACT Pack®導入有り群の眼圧データについて、初診時と180日経過以降の最初の眼圧値を対応のあるt検定で比較した。統計学的有意水準は両側5%とした。
田中敏博 他:緑内障患者通院継続支援システム導入による緑内障患者の通院継続率に及ぼす影響. 眼科. 2020; 62(8): 801-807.
本試験は参天製薬株式会社の資金により行われた。本論文の著者のうち2名は、参天製薬株式会社の社員である。
緑内障患者通院継続支援システム「ACT Pack®」のサポート内容※
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- 初めて緑内障と診断された患者さんにお渡しいただくファイル
- 医師から簡単にご紹介いただきます
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- 患者さんに緑内障の理解を深めていただく映像
- 会計までの待ち時間に映像を見ていただきます
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- 通院継続に向けた患者さんへの働きかけ
- 日時の予約とリマインドを実施いただきます
※患者さんの通院継続を、初診時からサポートするためにお役立ていただけるツールをご用意しています。詳しくは、弊社担当MRにお問い合わせください。
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監修者コメント
東京大学医学部 眼科学教室 教授 相原 一 先生
緑内障診療ガイドラインにおいて、その治療の目的は「患者さんの視覚の質(quality of vision:QOV)と、それに伴う生活の質(quality of life:QOL)を維持すること」と定義されています1)。
その治療目的を達成するためには、医師が患者さんのアドヒアランスに留意し、眼圧下降効果・安全性のバランスが取れた治療を可能な限り患者さんの負担が少ない形で継続することが大切です。
しかし、緑内障の治療開始6ヵ月後の継続率は68.1%という報告2)にもあるように、治療を継続することは容易ではないと考えられます。
初回通院から180日後の通院継続率(累積生存率)が、ACT Pack®導入前は42.1%でしたが、ACT Pack®導入後は94.2%と有意に高値を維持しました。
ACT Pack®は体系的に通院継続を促す仕組みが組み込まれたパッケージとなっており、ACT Pack®を継続的に活用することは、患者さん自身の病状理解や通院継続の重要性の理解が進み、通院意欲の維持につながることが期待されます。