ヘビの目の仕組み・不思議:陸上の動物ではまれ?前後運動でピントを合わせる水晶体

陸上の動物ではまれ?前後運動でピントを合わせる水晶体 ヘビの目

サカナと同じような水晶体を持っている生き物が陸上にもいます。それがヘビです。私たちヒトをはじめ、陸上で生活するたくさんの生き物の目は水晶体の厚みを変化させることでピントを合わせるのに対して、なぜかヘビだけがサカナと同じように、水晶体を前や後ろに動かしてピントを合わせます。これは、ヘビと同じカメやトカゲなどの爬虫類の中でもヘビだけが持っている独自性です。

土の中などの暗いところで生活してきた途上で、厚みを変化させる水晶体が退化してしまい、再び地上生活をはじめたときに新しく目を発達させていったという考えが有力です。もしかすると、サカナと同じように水の中で生活していたのかもしれませんね。

サカナは視力がよくないのですが、ヘビもまたあまり目はよくありません。その代わりに、一部のヘビには「ピット」と呼ばれる第三の目があります。マムシやガラガラヘビなどのヘビには目と鼻の間に小さな穴があり、ニシキヘビなどは唇のところにたくさんあるウロコのくぼみにピット器官があります。その器官で、熱を感知して赤外線でモノをとらえることができます。ほんの少しの温度差も、ピット膜で感知して脳に伝えます。ヘビは網膜からの情報とピット膜からの情報が一緒になった光景を見ている可能性があります。

ピット膜がとらえたネズミの姿:赤外線サーモグラフィーで再現
サーモグラフィーは物体から出る赤外線を感知して画像にしています。物体の温度が高くなるにつれて緑色から赤色に、そして白色に画像が変わっていきます。

写真提供:伊知地国夫 氏(伊知地国夫科学写真工房)/撮影協力:日本未来科学館

引用文献
鈴木光太郎:動物は世界をどう見るか,pp.106-108,新曜社(東京),1995
疋田 努:爬虫類の進化,pp.97-98,誠文堂新光社(東京),2005
山田和久:爬虫・両生類ビジュアルガイド ヘビ,pp.135-139,東京大学出版会(東京),2002
ガリレオ工房編:びっくり、ふしぎ写真で科学3,pp.22-23,大月書店(東京),2003

取材協力
鳥羽通久 氏(財団法人ジャパンスネークセンター 館長:取材時)
http://snake-center.com