虹彩と瞳孔の不思議

虹彩と瞳孔の不思議

眼球の色がついている部分を虹彩(こうさい)、その真ん中にある、通常「黒目」と呼ばれている部分を瞳孔(どうこう)といいます。普通はこの瞳孔が大きくなったり小さくなったりしているように見えますが、実際には虹彩が伸び縮みをして、光の量を調整しています。カメラに例えると虹彩は絞りに相当します。

人生いろいろ、虹彩もいろいろ

目の中に入る光を調節するために、虹彩は伸びたり縮んだりして瞳孔の大きさを変えます。明るいところでは光の量を減らすために瞳孔は小さくなり、暗いところではより多くの光を必要とするために瞳孔は大きくなるのです。このとき活躍するのが虹彩の2つの筋肉。瞳孔を縮める瞳孔括約筋と、瞳孔を広げる瞳孔散大筋のたはらきで、ヒトの目の場合、瞳孔の大きさは2~6mmの間で変化します。暗い部屋にいるときと明るい部屋にいるときとで瞳孔の大きさをぜひ比べてみてください。瞳孔の変化の大きさにびっくりすることでしょう。また、瞳孔の大きさは若年者では大きく、年齢を重ねるにつれて小さくなります。

虹彩は目の色にも関係しています。目の色は、茶色、青色、グレーや緑色と多彩で、虹彩に含まれるメラニン色素の量によって変わってきます。メラニン色素は、有害な紫外線から身体を守る役目を持っている色素です。太陽の光が強い暑い国ではメラニン色素が大量に蓄積されて黒や茶色などのひとみになり、逆に太陽光が弱い寒い国ではメラニン色素の量が少なく、グレーや青色のひとみになるといわれています。近年の研究から青いひとみを持つ人々は6000年~1万年前に誕生したことがわかっています。それ以前には青いひとみの人はいませんでした。全く気の遠くなる話ですよね。
また、虹彩の色やパターンは指紋のように一人ひとり微妙に異なり、同じ虹彩のパターンを持つ人はいないといわれています。そのため、個人認証に使われることもあります。

大きく開いた瞳孔と縮んだ瞳孔
年齢による瞳孔の大きさのちがい(明るい場所)

引用文献
Eiberg, H.,et al.:Hum. Genet., 123(2),177-187,2008