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加齢黄斑変性の症状と治療
監修:九州大学医学部眼科教授 石橋達朗
ものが「見える」とは、眼から入った光の刺激が脳に伝えられ、映像として認識されることをいいます。まず、光が瞳孔(どうこう)から眼球内へ入り、水晶体(すいしょうたい)で屈折して硝子体(しょうしたい)を通り、網膜(もうまく)で光が感じとられます。この光刺激が視神経(ししんけい)によって脳に送られて、映像情報として認識されるのです。カメラにたとえると、水晶体がレンズ、網膜がフィルムの役割を果たしています。
■眼球の断面図
黄斑の役割
網膜のなかでもっとも重要な部分は、ものを見る中心となる黄斑(おうはん)です。黄斑は視力にもっとも関わりが深く、色を識別する細胞のほとんどはこの部分にあります。 黄斑に異常が発生すると、視力に低下を来します。また黄斑の中心部には中心窩(ちゅうしんか)という部分があり、ここに異常が生じると、視力の低下がさらに深刻になります。
■眼底の正面図
加齢黄斑変性は、黄斑の加齢に伴う変化によっておこる疾患で、高齢者の失明原因のひとつです。脈絡膜から発生する新生血管(脈絡膜新生血管)の有無で「滲出型(しんしゅつがた)」と「萎縮型」に分類されます。
脈絡膜新生血管とは?
網膜に栄養を送っている脈絡膜から、ブルッフ膜を通り、網膜色素上皮細胞(もうまくしきそじょうひさいぼう)の下や上にのびる新しい血管のことです。これは正常な血管ではないので、血液の成分が漏れやすく、破れて出血をおこしてしまいます。 |
「滲出型(しんしゅつがた)」加齢黄斑変性
視力にもっとも関わりの深い黄斑が悪くなるため、急激な視力低下や中心暗点(下図参照)を自覚することが多く、病状が進行すると視力が失われる可能性があります。また、片眼に病巣がみられたら、もう片方の眼も発症している可能性がありますので、両眼の検査を受けましょう。

「萎縮型」加齢黄斑変性
黄斑の加齢変化が強くあらわれた状態(網膜色素上皮細胞が萎縮する、網膜色素上皮細胞とブルッフ膜の間に黄白色の物質がたまる)で、病状の進行は緩やかで、視力はあまり悪くなりません。しかし、新生血管が発生することもあるので、定期的に眼底検査、蛍光眼底検査を行い、経過をみる必要があります。特に、片眼がすでに「滲出型」加齢黄斑変性になっている場合は、注意深く経過をみなければいけません。
高齢者に多く発症することから、黄斑、特に、網膜色素上皮細胞の加齢による老化現象が主な原因と考えられています。また、はっきりしたことはわかっていませんが、高血圧や心臓病、喫煙、栄養状態(ビタミン、カロチン、亜鉛などの不足)、遺伝などの関与も報告されています。しかし、加齢黄斑変性の原因、病態は完全には解明されておらず、現在もなお様々な研究がなされています。
もともと加齢黄斑変性は欧米人に多く、日本人には少ない疾患でした。その主な理由としては、欧米人の眼が日本人の眼に比べ、光刺激(眼の老化を促進する原因)に弱いことが挙げられます。最近では、日本でも発症数が増加しており、日本人の平均寿命の延長が原因として挙げられています。また、生活様式が欧米化したこと(主に食生活)や、TVやパソコンの普及により眼に光刺激を受ける機会が非常に多くなったことも原因のひとつと考えられています。
加齢黄斑変性は先進国において失明の主原因となっており、近年の急激な高齢者人口の増加に伴い、増加の一途をたどっています。アメリカでは現在、本疾患が中途失明を来たす疾患のトップです。わが国では、福岡県久山町で行われている久山町研究において、50歳以上の住民の0.67%に「滲出型」の加齢黄斑変性がみられ、加齢とともにその有病率が増加していることが明らかになりました。また、5年間の追跡調査では、50歳以上の住民の0.8%に加齢黄斑変性が発症することが示され、欧米諸国の発症率の報告とほぼ同様の数値を示していることもわかりました。さらに日本人では、男性の発病率は女性の約3倍と、男性に発症しやすいことも示されました。
網膜の中心部が悪くなるので、視野の中心の、もっともよく見ようとするところが見えにくくなります。病巣が黄斑に限られていれば、見えない部分は中心部だけですが、大きな出血がおこれば、さらに見えにくい範囲が広がります。
変視症(へんししょう)、中心暗点(ちゅうしんあんてん)、視カ低下(しりょくていか)
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■変視症
ものがゆがんで見えます。
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■中心暗点
見ているものの中心が欠けて見えません。
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■視力低下
見たいものがはっきり見えません。
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簡単にできる自己チェック
日頃から、ときどき片眼をふさいでものを見て、見え方に異常がないか確認しましょう。
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視力を保つために早めに検査を受けましょう
眼底検査(がんていけんさ)
眼底にある網膜の状態をくわしく調べるために行います。検査の前に目薬をさして瞳孔を開きます。まぶしくて近くが見えない状態が約3時間続きますが、自然に元に戻ります。
蛍光眼底検査(けいこうがんていけんさ)
腕の静脈に蛍光色素を注射してから眼底を調べます。蛍光色素によって血管だけが浮き彫りになりますから、血管の弱い部分やつまったところ、新生血管がよくわかります。
光線力学的療法(PDT:Photodynamic therapy)
光に反応する薬剤を体内に注射し、それが新生血管到達したときにレーザーを照射する治療法です。弱いレーザーによって薬剤が活性化され、新生血管を閉塞します。使用するレーザーは通常のレーザーとは異なり、新生血管周囲の組織にはほとんど影響しません。3ヶ月ごとに検査を行い、その結果により必要に応じて再度実施するという、継続的に行う治療法です。
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治療前の眼底

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治療後の眼底

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レーザー光凝固術
新生血管をレーザー光で焼き固める治療法です。正常な周囲の組織にもダメージを与えてしまいますので、新生血管が中心窩にある場合はほとんど実施されません。
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治療前の眼底

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治療後の眼底

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新生血管抜去術
新生血管を外科的に取り去る治療法です。新生血管が中心窩にある場合も実施されますが、中心窩を傷つけてしまう可能性もあります。
黄斑移動術
中心窩の網膜を新生血管から離れた場所に移動させることにより、中心窩の働きを改善する治療法です。新生血管が中心窩にある場合に実施されます。ものがふたつに見えるなどの副作用がおこる場合があります。
経瞳孔温熱療法(TTT:transpupillary thermotherapy)
弱いレーザーを新生血管に照射し、軽度の温度上昇により、新生血管の活動性を低下させる治療法です。
薬物療法
ステロイド剤や血管新生阻害剤などの投与が試みられています。効果を得るには繰り返しの投与が必要で、またPDTとの併用も考えられています。
早期治療で視力は保つことができます
治療後の視力は、病状の進行度によってさまざまです。黄斑のなかでも特に重要な中心窩に病態があらわれている場合、視力の低下は著明です。早期に治療を開始すると、良好な視力が保たれる傾向にあります。
定期的に眼のチェックをしましょう
加齢黄斑変性と診断された4割程度の人では、経過とともに両眼に発症するといわれています。良いほうの眼も定期的に医師に診てもらいましょう。
バランスのとれた食事で眼の健康を保ちましょう
亜鉛の血中濃度の低下と加齢黄斑変性の関連が指摘されています。加齢に伴って、亜鉛が含まれている食品(穀類、貝類、根菜類など)の摂取量が少なくなるとともに、腸の亜鉛を吸収する力が低下してしまうことから、亜鉛不足になりやすいといわれます。また、カロチノイドの摂取量が少ないと発症しやすいという研究報告もあります。なるべくカロチノイドを多く含んでいる緑黄色野菜を摂取するようにしましょう。全身の健康を維持するためにも、バランスのとれた食事を心がけましょう。 |
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